HOME > 歯科をデザインするとは

歯科をデザインするとは

藤瀬恭平と名刺交換をした時に目に飛び込んできた言葉、それは「歯科デザイナー」という文字。
筆者もこれまで数百という歯科医院、そこで働く歯科医師の取材を行ってきたが、歯科デザイナーという言葉は初めて聞く言葉であった。
早速、歯科デザイナーとはいったい何なのかを藤瀬に質問してみた。

建築物を造ることと歯科の治療は似ている 建築物を造ることと歯科の治療は似ている
 

「世の中にはいろいろな分野でデザイナーっているでしょう? 歯科業界にもデザイナーがあっていいと思うんです」

なんともつかみどころのない回答が返ってきた。そしてこう続ける。

 

「建築物を造ることと歯科の治療は似てると思っているんです。建築物を建てる時は、まずは地盤を調査して地盤が悪いところは改良する、そしてその次は基礎ですよね。しっかり基礎を作らないと長く使える安全な建物はできません。そしてその後に構造ができて、建物らしくなっていきます。ここで美しいとかかっこいいとかの見た目の話もでてきたり、といった具合ですね。

歯科治療も同じだと思うんです。どんなに見た目が白くきれいに見える歯も、根元が弱っていたら健康な歯とは言えませんよね。歯を一本だけ仕上げても全体を見ると力学的に噛む力に耐えられていなかったり、、、。日頃からメンテナンスしていないと早い段階で老朽化してきたりと。機能面にも優れ、審美面も優れている健康な歯を皆さんには持ってもらいたいです。」


“デザイン”というと見た目の華やかさに目を奪われがちだが、そこには実用面も考慮された機能美がある。それが美しさの本質であり、それを求める「歯科業界のデザイナー」が藤瀬である。


そしてこうも続ける。


「歯科治療は計画がとても大事です。建築でいうと設計図、図面ですね。それは、「理想の状態」になるように自分で勝手に計画する訳にもいかないんです。当たり前ですけどね。患者様はお一人一人全く違いますから。年齢・性別やお仕事や普段のお食事や趣味など、その方の生活背景を理解した上で計画を立てる必要があるんです。

患者様は痛みがあるなどいつもと違う違和感を感じている部分は伝えることができますが、本当は違うところに原因があったりすることも多い。患者様が口にされないことをカウンセリングを通して見つけていくことが大事なことなのです。」

- でも、藤瀬先生から見て「本当は必要な治療」でも、患者様が必要じゃないと思ってご提案を拒むこともあるんじゃないですか?

「そういう場合もあります。私たちは患者様の意向を最大限に尊重したいと思っています。ただ、患者様の意向通りの治療の先に良くないことが待っているとしたら、それは止めないといけません。私たちはプロですからね。長い目で見たときに、時間と費用が少しかかったけど治療して良かった。と思ってもらえればそれで良いと思っています」


“デザイナー”というとある種「芸術家」と同じような見られ方をすることもしばしばある。
藤瀬は「歯科デザイナー」として、「機能面・審美面をともにかねそろえた理想的な歯」を求めるアーティストでありながら、患者様の声を大事にし、患者様に合ったオーダーメイドの治療を提案する「患者様に寄り添う歯科医師」でもあった。
この取材を通して筆者はデザイナーという言葉の重みを感じることができた。